涅槃の真因は ただ信心をもってす(8月の法語カレンダー)

涅槃の真因は ただ信心をもってす

2019年の法語カレンダー8月号の言葉です。

涅槃という言葉を辞書で調べると《(梵)nirvāṇaの音写。吹き消すことの意》と出てきます。これは言語そのものの意味で、日本語の意味では

「煩悩 (ぼんのう) の火を消して、智慧 (ちえ) の完成した悟りの境地。」と出てきます。でも、この辞書の意味だけでわかる人がいるのでしょうか。なんとなく煩悩がなくなった世界は想像できるかと思います。でも実際に、煩悩が消えた世界は私たちにはどのように見えて、私たちはどのように感じるのでしょうか。これを想像できる人はいないと思いますし、説明できる人もそうはいないと思います。

話は脱線しますが、ある有名な料理家の人のインタビューを読んだことがあります。

その料理家の人に「先生、この世界で一番美味しいと思う料理なんですか?」と記者が質問しました。すると「その瞬間に食べたいと思って、その人が美味しいと思う料理です。私も北極で食べるアイスがとても美味しく感じるときもあるかもしれません、朝からこってりしたラーメンが食べたいときもあるかもしれません。」と答えられました。おそらく記者はフランス料理や中華料理といった答えが欲しかったのでしょう。私はこの記事を読んで深く関心したことを覚えています。美味しいと思うものはそれぞれ個人で異なりますし、またそれはタイミングによっても変わってきます。さらに言えば料理の味を説明だけで完璧に伝えることは著名な料理評論家の人でも難しいことではないでしょうか。

涅槃の話でもこれは当てはまるのではないでしょうか。まず、煩悩も人それぞれで異なりますし、タイミングによっても異なります。また、悟りを体験した人もかなり少ないでしょうし、たとえ体験したとしてもそれを口で説明するのは無理難題であるのは確かでしょう。

煩悩も十人十色であってどんな煩悩であっても対応できる修行は恐らくないでしょう。ひとつひとつの煩悩をまさしくシラミ潰しのようになくしていくなんてことは私たち凡人にはとても不可能だと思います。なので、私たちは自身の力で煩悩を一つずつ潰して涅槃を目指すより、ただただ阿弥陀様の力を頼りにすれば良いと思います。今月の法語にもあるように「ただ信心をもって」いれば私たち凡人でも涅槃に近づけるのではないでしょうか。