解脱の光輪はきわもなし  光触かぶるものはみな 有無をはなるとのべたまう  平等覚に帰命せよ

「見えないものを見えるようにする」

これはノーベル物理学賞を受賞された東大の小柴先生の研究テーマです。小柴先生はニュートリノ粒子をスーパーカミオカンデという施設を作って観測されました。ニュートリノ粒子は宇宙から地球に降り注ぐ粒子なのですが発生がとても希な上とても小さい粒子なので観測するのは不可能でした。そこで小柴先生はとても大きく深いプールを作ってその周りを無数のセンサーで覆いました。ニュートリノ粒子がプールの中を通過すると多くの水粒子を弾き飛ばしながら進んでいきます。その弾き飛ばされた水粒子を観測することで、見えなかったニュートリノ粒子があるということを証明されました。

解脱の光輪はきわもなし  光触かぶるものはみな

有無をはなるとのべたまう  平等覚に帰命せよ

阿弥陀様の救いの光はどこまでも明るく照らし出している。有ることと無いこと、善と悪、生きることと死ぬことなど二つに分けてしか考えられない愚かな私たちでもその救いの光で皆平等に救っていただけるので阿弥陀様を頼りにしなさい。

このような現代語訳になると思います。仏教には中道という考え方がありまして、悟りを開くために必要な道であるとされています。その中道とは物事を単純に対比する二つに分けるのではなく、二つに分けているのは私たちの勝手であるので有無同然として物事を見なければなりません。

浅原才市さんの残された言葉で

影を見よ 光明の光のおかげで 影がみえるぞ 浄土の影がこれでわかるぞ ごをんうれしや なむあみだぶつ なむあみだぶつ

私たちは南無阿弥陀仏と日常的にお勤めをして、阿弥陀様に救いを求めています。でも実際に救われたと心の底から実感された方はそうはいないのではないでしょうか。私たちの多くは心に後ろめたいことの一つや二つはありますし、どんな人でも煩悩は数限りなく沸いてくるでしょう。そのような自分自身に気づけば気づくほど阿弥陀様のどんなものでも救おうとする摂取不捨のお力にすがりたくなるものです。才市さんの言葉でも阿弥陀様の救いの光で照らし出された私たちの影の部分を見れば見るほど私たちは自分自身を愚かなものであると把握し、また阿弥陀様の救いのお力を実感することなり、なんとありがたいことかと言っておられました。そのように味あわせていただきました。